【個人の見解】
親子で楽しめる・・・・・・☆☆☆☆☆
暴力・残酷描写がない・・・☆☆☆☆☆
性的・刺激的な描写がない・☆☆☆☆☆
娯楽性・・・・・・・・・・☆☆☆☆☆
満足度・・・・・・・・・・☆☆☆☆☆
学習・教訓的要素・・・・・☆☆☆☆☆
総合・・・・・・・・・・・☆☆☆☆☆
今日は「On Your Mark」を再び取り上げたいと思います。今回で3回目になります。
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今回も、スタジオジブリが常識の範囲内でお使いください、ということで公開してくれている画像を中心にすすめさせていただきます。
© 1995 Studio Ghibli
私が初めてこの作品を見たのは、購入したジブリのDVDボックスの中に短編集を収めた1枚があり、その中に納められていたので、「On Your Mark」を知ったのだと思います。
作品を通して流れるチャゲ&飛鳥の楽曲は、作品の世界観を盛り上げ、映像と音楽が限りなくうまく融合を遂げた成功事例になっています。
また、過去と未来を交錯させる手法の映像は、見る人によって、様々なストーリーを想像(創造)させる、ジブリにとって、ある意味、実験劇場だったのでしょう。
上のポスターの右上に小さく、「ジブリ実験劇場」と記載されているのは、その辺が狙いとしてあったのかもしれません。
さて、ネタバレを超えた私なりの考えと想像なのですが、ご都合主義的にこんな感じに考えています。
冒頭に出てくるシーンは、エンディングの一歩手前のシーンだと思います。
常に時間を前後させる巧みな演出がなされていて、過去と未来が交錯するような不思議な感覚が全編を通して感じられます。
まるでアメリカのミュージックビデオのプロモーションを見ているような錯覚にとらわれます。
特殊部隊が邪悪な宗教集団の本拠地に突入して、救出したのは、なんと背中に羽根が生えた少女なのです。
でも、せっかく助けたはずなのに、今度はその少女が研究所に収容され、研究対象として以前よりもひどい状態に置かれています。
自分たちと違うものの存在を受け入れない現代の私たちは、すべてを科学の名のもとに解明しないと気が済まないのかもしれません。
自分たちが救出した事は正しかったのか?二人は悩んた末、研究所から少女を助け出す事を決意します。
少女を救出した2人は、研究所からの追っ手から逃げきれずに、高速道路から車ごと地表へ落下していきます。
落ちながらも、自分たちの命の行く末よりも、彼女を助けようとする2人。
彼女には羽根が生えているので、少なくても彼女がその気になれば、彼女だけでも助かるはずです。
でも・・・なぜか飛ぶことを恐れる彼女。また、2人のことも真剣に心配しているようでもあります。
この世の中で、すべての人間に善なる部分があるとすれば、このような姿が、究極の『善』なのかもしれませんね。
人間の無意識の行動のなかに、このような要素があれば、これだけでも人間は生きていく価値(この地上に存在する価値)があるように、私には思えます。
最後の最後に奇跡が起きて、彼らは墜落から免れ、追手からも逃げることに成功します。
これは、あえて説明したりする必要があるのか迷いますが、大方多くの方が想像する範囲の1つの解釈だと思うのですが。
少なくても、私は、彼女が天使で天使にしか使えない「時間転移」と「時空改変」の能力を使ったからだと思うのです。奇跡の発現ともいえるかもしれませんね。
私は、過去の日本のアニメで、似たようなシーンを思い起こします。
ジブリの作品ではありませんが、「ふしぎの海のナディア」(ガイナックス)でも、物語のフィナーレ近くで本来ありえないことが起き、事態が大きく動くきっかけを作っていることに似ています。
それは最終話の「星を継ぐ者・・・」で、悪の組織に機械ロボットにされた兄が、兄のロボットに供給される電源が切られているのに、動いて主人公のナディアを救うシーンで、描かれています。
人の意志の力は、究極的には、時間や物理空間をも超越することを物語っているのかもしれません。
2人の堅い意志と天使の彼女の力が合わさって、発現した「奇跡」ではないかと考えたいですね。
天使の彼女の力だけでは、なしえなかった事なのかもしれません。(私の空想ですが)
物語のフィナーレとして、2人に助けられた少女は今度こそ、自分の意志と力で天高く飛び立っていきます。
彼女は、いったいどこから来たのか、どこへ行くのか。その辺は、みなさん考えて下さい。そんな感じです。
すべては想像の中でしか答えは見つけられません。彼女を助けた2人にとっては、組織に逆らった自分たちの今後の運命も含めて、そのようなことは、どうでもよかったのかもしれませんが・・・・
この作品は、原作・脚本・監督が 宮崎 駿氏です。製作は Real Cast Inc.。制作はスタジオジブリ。音楽は飛鳥涼。主題歌 CHAGE&ASKAとなっています。
上映時間は 6分48秒で、その全編が一切のセリフが無く、映像と効果音以外は、CHAGE&ASKAの音楽だけが流れています。
上映は、東宝配給の「耳をすませば」に合わせて併映されたようですが、私の記憶には残っていません。公開日は 1995.7.15(土)~でした。
この作品のあと、7年後に製作されたアニメに「灰羽同盟」があります。
「On Your Mark」の冒頭部分に出てくる不気味な核処理・開発施設のような建物が、未来文明の終焉を意味していて、その後の世界は、塀の中に囲まれた中世のような世界に戻ったとしたら、「灰羽同盟」のような世界が出てくるような気もします。
私たちがむしろ目を向けなければならない事は、「灰羽同盟」の「灰羽」が生まれてくる原因ではなく、「灰羽」を尊重しながら、むしろ役割分担やルールを決めて一緒に生きていくことなのかもしれません。
この作品では、天使の「灰羽」は、多くの者が今までいた塀の内側の世界から、塀の外の世界に飛び立っていく設定になってます。
「On Your Mark」の空想を補う考えるヒントが「灰羽同盟」にはあると思うのです。
また、堅苦しい話ですが、現代のいびつな富の偏在や多くの人々に内蔵する日常生活の中の閉塞感は、「On Your Mark」で天使を助け出す事がゴールではなく、むしろ一緒に生活できなかったこと(本質)にも目を向けるべきだったように思えるのです。
決して、作品に配慮が足りなかったなんて、言っている訳ではなく、見る側にさらに深く考えることを要求してる作品なんだと考えることが正解なのではないかと、思ってしまうのです。
私は、ありきたりなご都合主義的にしか見ていませんが、大概のストーリーの解釈は多くの人が、一度見た時点では、ある程度は同じような方向性かもしれません。
でも、連歌の世界のように最初の発句が「On Your Mark」なら、次に「灰羽同盟」が出て、さらに次には、新たな切り口の創造的な作品が生まれるのかもしれない、と考えると、日本のアニメの行く末も、楽しみなことがまだまだ、たくさんあるのではないか、と思えてならないのです。
※この作品については、ガイナックスにいた岡田さんが細かく解説し、取り上げていたようです。読むと私のくだらない文書が書けなくなってしますので、まだ拝読していません。機会があれば是非読んでみたいと思っていますが、少し勇気が必要ですね。